ジムモリソンの歌声と走った夜
いつもの夜のランニング、
ジムモリソンの底なし沼のような、あの歌声を頭の中で聞きながら、一時間近く走った。
兄が送ってきた、もう読まなくなった、いらない本の中にジムモリソンの本もあった。
今更、ドアーズかと思いながら、何となく、手に取ってみたのだけれど、
結局、最初から最後まで、二回も読んでしまった。
何年も前に、彼の伝記を読んだ時にも思ったことだけれど、
ジムモリソンという人はよく分からない。
それが何かは分からないけれど、他の多くの伝説になったロックスターとは何かが違う。
浮世離れしたままの、孤独ないたずら小僧のようで、何処か滑稽な感じもする人。
読み終わった後、彼のことを本当に理解していた人なんていなかったのだろうなと、
少し寂しくなってしまったけれど、それは別にジムモリソンじゃなくても、
ロックスターでなくても、誰であろうと、みんな同じことかと考えながら、
ジャージに着替え、屈伸をして、表に出てみると、生暖かい風に乗って、
何処か遠くから、途切れ途切れに聞こえてくる盆踊りの祭囃子と、頭の中の
ジムモリソンの歌声が一つになって、一瞬、気が遠くなるような感じがした。
先週は板橋にあるDream's Cafeという素敵なお店で、
ブルーススプリングスティーンのハングリーハートをやった。
聞いてくれていた人たちが喜んでくれたので、嬉しくなって、
帰り道は一人でスプリングスティーンメドレーを口ずさみながら、
やっぱり、自分はスプリングスティーンが大好きなんだなあと、
演奏したり、曲を作ったりしている時が、一番、自分のままでいられる時なんだなあと
納得しながら、今になって、やたらと愛着のわいてきた、
僕が住んでいる街の、ありふれた街並みを夜風に吹かれながら歩いた。
今度はドアーズの曲をやってみようか、何か一人ででもやれそうな曲、
ジムモリソンとオルガンのレイマンザレクを一人二役でと考えたら、
何故かふと笑ってしまった。
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