今夜はGeneを聞きました
夜のランニング、いつもと違うコースを走って帰ってきたら、
ついこの間までは、まだ工事中だった、新しいショッピングモールがオープンしていた。
真新しい建物の前で足を止めると、乾いた光の中で、小さな男の子が、
まるでこの世の終わりのような、悲しい声で泣きながら愚図っていた。
「ずっとここにいて、そうしてなさい。そうやっていつまでも一人で泣いてなさい。」
母親の言葉に、一層悲痛さを増していく、その嗚咽を聞いていると、
怒られているのは僕のような気がしてきて、申し訳ないような、
いたたまれないような気持ちで、その場を走り去った。
場違いな場所で演奏するのには、もう慣れてしまったけれど、
叩きつけるようにピアノを弾いて、心を閉ざしたまま、
吐き捨てるように歌って、帰ってきた後の後味の悪さには慣れることはない。
今夜はジーンを聞いた。
90年代のブリットポップのブームの後も、頑張って活動を続けていたけれども、
何年か前に解散してしまったイギリスのバンド。
もっと上手に立ち回って、もっと要領よく振る舞って、
もっと上手く音楽業界の詐欺師みたいな連中にも取り入って、
コールドプレイなんかよりも売れてやればよかったのに。
音を消したテレビのニュースの画面が、エボラ熱からオバマ大統領の顔へ、
増税の文字から野球の結果へと目まぐるしく変わり、一日の終わりへと向かっていく頃、
ショッピングモールの前で泣いていた、あの子もとっくに夢の中の住民になっている頃、
ご飯が炊きあがるのを待ちながら、僕はジーンを聞いていました。
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