秋の夜長のストレイキャッツ
秋になったら、買っておいたまま、まだ読んでいない夏目漱石の明暗を読もうと、
少し前から本棚から出してある。
漱石の最後の作品で未完の長編。
漱石の長編では、僕がまだ読んでいない最後の一冊なので、
楽しみにして、わざわざ読まずにとっておいたのだけれど、
何日か前から読み始めようと思いながら、まだ読み始めていない。
読み出したら、他の漱石の小説のように引き込まれていくのだろうと思うけれど、
全く手に取る気がしない。
昨日の夜も読もうと思いながらも、結局は読まずに、
目的もないのにyoutubeをだらだらと見始めてしまい、
ジャズのセロニアスモンクやニーナシモンの古い映像から始まって、
気が付いたら、最後には何故かストレイキャッツの昔のPVに辿りついていた。
十代の後半から二十歳過ぎ頃まで、四六時中一緒だった仲間の集まる部屋では
ピストルズやガンズやエアロスミスなんかがよくかかっていた。
僕がみんなに聞かせるバンドはあまり評判が良くなかったけれど、
ストレイキャッツはみんなすぐに気に入って、彼らのクールなロカビリーは
暑苦しくて、凍えそうな、あの狭い部屋には欠かせない音になった。
ストレイキャッツは兄に教えてもらったバンドで、
姫路のスタジオでみんなで下手くそなコピーもやった。
そんなようなことを思い出しながら、一昔前の深夜のB級青春映画のような、
楽しくて、ちょっと甘酸っぱい彼らのPVをあさっている頃には、
漱石先生のことは頭から完全に消え去っていた。
秋の夜長の迷い猫。
明暗を読み始めるのは、今晩からか明日からか明後日からか来週からか、
いずれにしても、この秋の間には読み終わっているはずだと思います。