Junji In The Rain

自分の音楽、自分の大好きな音楽の話など

グラムパーソンズの幽霊

グラムパーソンズはモハーヴェ砂漠に葬られた。

それは彼が望んでいたことだった。

グラムパーソンズの歌声を聞くと何とも言えない気持ちになる。

もしかしたら、何とも言えない気持ちの時に彼の歌を聞くのかもしれない。

 

僕の中では、俺たちに明日はない明日に向かって撃てなどの

アメリカンニューシネマの最後には破滅して死んでゆく主人公たちと

グラムパーソンズが重なっている。

 

父親の自殺、高校の卒業式の日にアルコール中毒で亡くなった母親、

彼の中で自由に混ざり合っていったカントリーとロック、

人種差別が続く南アフリカへのツアー参加の拒否を理由に

一時的に加入していたザ バーズから脱退、その後に自分が結成した

フライングブリトーブラザーズからは追い出されてしまう。

酒と麻薬の日々、そこから立ち直るきっかけとなったエミルーハリスとの出会い、

最後の場所はジョシュアツリーのモーテルだった。

 

生前、グラムパーソンズはカリフォルニアの現在はジョシュアツリー国立公園に

なっている辺りを頻繁に訪れていたという。

彼の死後、彼の遺体が納められた棺桶は空輸される前に空港から二人の友人によって

 盗み出され、ジョシュアツリーの彼が大好きだった岩場へと運ばれ燃やされた。

 

今でもその岩場では、夜になるとグラムパーソンズの幽霊が現れて

歌ったり踊ったりしているという話があるそうだ。

グラムパーソンズの幽霊なら全く怖いとは感じない。

一緒にワインでも飲みながら、砂漠の風に吹かれて、朝までセッションでもしてみたい。

 

僕も自分だけの特別な場所を見つけられたらなと思う。

死んだ後にまで地元に連れ戻され、墓石の下の狭い暗がりに

永遠に閉じ込められているなんてまっぴらだ。

僕の理想の場所は、いつでも夕日が綺麗に見える小高い丘に広がる大きな草原。

そこで好きなだけメロディーを作ったり、そよ風と一緒に歌ったり、

雨粒の落ちる音を聞いていたいと思う。

そんな場所が見つかればいいなと思う。

 

「そうそう いつか君が話してくれたことをずっと覚えていたんだ

あの夢が叶えられなかったら僕は破滅していただろう

僕は進んだ 2万もの道をひたすら進んだ

そしてどの道も 故郷の君のもとに繋がっていたんだよ」

リターン オブ ザ グリーヴァス エンジェル by グラム パーソンズ