65才の孤高のロッカー ウィリーナイル
前の記事を更新してから、気が付いたら二週間も経っていた。
凄まじく沈んだ気持ちで過ごしていたので、ブログのことなどは頭に浮かばなかった。
40才になって少しは変わったと思っていたけれど、結局は僕が本当に心を開ける場所は
音楽の中にしかないのだという事実に金縛りのように襲われて最低の気分だった。
うんざりするほど新しい曲を作りまくった。
腕が痛くなるまでキーボードを何時間も弾き続けて、真夜中に玉子ごはんを食べた。
嵐の日に吹っ飛んだ洗濯機の蓋がまた外れたので、ガムテープでペタペタと貼り直した。
ウィリーナイルのアルバム、STREETS OF NEWYORKとHOUSE OF A THOUSAND GUITARSを繰り返し聞いた。
ボブディランやブルーススプリングスティーンにクラッシュが混じったような繊細で
シャープで温かいニューヨーカーのロックが胸にすっと入ってきた。
スタジオでピアノを弾きながら何度も同じところで引っ掛かってミスするので、
右手を切り落としてやろうかと思った。
先週の水曜日には近所にある美容院に行った。
同世代とおぼしき女性が一人でやっている自宅兼店舗の小さな美容院で、
ピアノと英会話の話をした。
綺麗な手ですねと言われたので、父親には何もできない手だと言われますと答えた。
帰ってキーボードを弾きながら、あの人はこの街でずっと生きていくんだろうなと
考えていたら急に泣きたくなってきた。
随分と空気が冷たくなった次の日の帰り道、ウィリーナイルの曲を口ずさみながら、
このまま止まらずに何処までも歩き続けていたいような気持ちになった。
ウィリーナイルはニューヨークを拠点に活動している、
今年65才になるシンガーソングライター。
数年前にスプリングスティーンとライブで共演しているのを見て彼のことを知った。
有名なわけでもヒット曲があるわけでも何処かに所属しているわけでもないけれど、
彼の曲を聞くと、そんなことは音楽には何の関係もないのだと思い出させてくれる。
格好つけただけのアーティスト気取りの連中や、彼と同世代の大御所と呼ばれる
にやついた成金連中よりも彼の曲は何倍も素晴らしい。
そして、彼のような人をちゃんと評価するニューヨークという街もやっぱり素晴らしい。
ブログも辞めてやろうかと思っていたけれど、ウィリーナイルを聞きながら、
この記事を書いているうちに、やっぱりもう少し続けてみようかと思い直しました。
今年、ウィリーナイルはニューアルバム、AMERICAN RIDEを発表しました。